
※本記事は筆者が運営するNoteより公式に転載したものです
はじめに|SUUMOに載らない「成約価格」で見ると、相場は全く変わります
SUUMOやat homeで表示されているのは「希望価格」です。売主側が「これで売れたらいいな」と設定した数字であり、実際に成約した価格ではありません。
本記事では、国土交通省の不動産情報ライブラリに収録された成約データ(2022年Q1〜2025年Q4)2,344件を独自集計・分析し、埼京線沿線における中古マンションの「実際の取引価格」をお伝えします。
フィルタリング条件は以下のとおりです。
- 単価フィルタ:20〜130万円/㎡(ファミリー実需に即した価格帯)
- 面積:20〜120㎡
- 駅距離:徒歩25分以内
- 最低取引件数:直近20件以上(統計的信頼性を担保)
このフィルタを通過したのは10駅・2,344件。不動産業者が口を揃えて「人気路線」と語る埼京線ですが、最も高い駅(池袋)と最も安い駅(北戸田)では、70㎡換算で約3,900万円もの価格差が生まれています。
「どの駅で買うか」が、資産形成の明暗を分ける時代です。
全体マップ|路線内での立ち位置を一目で確認する
まず、各駅の「直近㎡単価(万円/㎡)」と「2022→2025年の上昇率(%)」を散布図で可視化しました。

グラフの読み方
右上(赤):単価が高く、まだ上昇中 → 高値警戒ゾーン
左上(黄):単価は低いが上昇中 → 注目エリア
右下(橙):単価は高いが上昇が鈍化 → 要慎重ゾーン
左下(緑):単価が低く安定推移 → 実需向き割安エリア
高値警戒1位・2位の実像
データを精査すると、路線内で最も単価が高い2駅が興味深い動きを見せています。
🔴 高値警戒1位:池袋(直近2025年単価 113.4万円/㎡)
70㎡換算の試算価格:約7,938万円
22→25年上昇率:+0.6%
池袋は路線内トップの単価を維持していますが、上昇率はわずか+0.6%とほぼ横ばいです。2022〜2025年にかけて単価は概ね110〜113万円/㎡で推移しており、大きな値上がりは一巡した可能性があります。予算8,000万円前後を池袋に投じる場合、今後の値上がり期待は上値余地が限定的かもしれません。
🟠 高値警戒2位:大崎(直近2025年単価 106.9万円/㎡)
70㎡換算の試算価格:約7,483万円
22→25年上昇率:▼7.4%(下落)
大崎は路線内で唯一、2025年単価が2022年を下回る駅です。2022年に115.4万円/㎡だった単価が、2025年には106.9万円/㎡まで低下しています。品川区内での競合物件の増加や、高値圏での需給調整が続いている可能性が考えられます。「下がっているから今が買い時」という判断は、下落の要因をよく見極めてから行う必要があります。
【全主要駅の価格推移一覧】
以下の表は、国交省の成約データから算出した各駅の実際の取引単価です。SUUMOの掲載価格ではなく、実際に売買が成立した価格であることをご確認ください。
このラインより上のエリアが無料で表示されます。

※ 単位:万円/㎡。実需フィルタ(20〜130万円/㎡)適用後の数値。
出典:国土交通省『不動産情報ライブラリ』成約データ(2022年Q1〜2025年Q4)
各駅の詳細データ(2025年単価・70㎡換算・上昇率)
| 駅名 | 2025年単価 | 70㎡換算 | 22→25上昇率 | 分類 |
|——|———–|———|————|——|
| 池袋 | 113.4万円/㎡ | 約7,938万円 | +0.6% | 高値横ばい圏 |
| 大崎 | 106.9万円/㎡ | 約7,483万円 | ▼7.4% | 高値調整中 |
| 板橋 | 104.6万円/㎡ | 約7,322万円 | +1.4% | 高値圏・安定 |
| 赤羽 | 101.1万円/㎡ | 約7,077万円 | +3.4% | 高値圏・緩やかに上昇 |
| 北赤羽 | 91.4万円/㎡ | 約6,398万円 | +18.9% | 注目・上昇中 |
| 北与野 | 86.6万円/㎡ | 約6,062万円 | +24.8% | 割安・上昇中 |
| 浮間舟渡 | 79.1万円/㎡ | 約5,537万円 | +15.6% | 割安・上昇中 |
| 武蔵浦和 | 77.1万円/㎡ | 約5,397万円 | +11.4% | 割安・安定 |
| 戸田公園 | 63.9万円/㎡ | 約4,473万円 | +10.0% | 割安安定圏 |
| 北戸田 | 57.7万円/㎡ | 約4,039万円 | +12.0% | 割安安定圏 |
【高値警戒 vs 割安安定の代表駅 年次推移】
「高値1位(池袋)」と「割安1位(北戸田)」の年次単価推移を折れ線グラフで比較しました。

池袋(高値1位):上昇は止まった、でも下がりにくい水準でもある
池袋は2022年の112.7万円/㎡から2025年は113.4万円/㎡とほぼ横ばいです。都心ターミナル駅という希少性から暴落する可能性は低いと考えられますが、7,000万〜8,000万円台のローンを組んで購入する場合、将来の売却益を期待することは難しい局面に入っている可能性があります。
北戸田(割安1位):着実な上昇を見せる「埼玉割安株」
北戸田は2022年の51.5万円/㎡から2025年の57.7万円/㎡へ、+12.0%上昇しました。絶対値として57.7万円/㎡(70㎡換算:約4,039万円)は路線内で最も手が届きやすい価格帯を維持しています。戸田市は子育て施策に力を入れており、埼玉圏内でのファミリー実需は底堅いといえます。
⚠️ 「上昇率が高い」駅への注意事項
| 駅名 | 上昇率 | 2022年単価 | 2025年単価 |
|——|——-|———–|———–|
| 北与野 | +24.8% | 69.4万円/㎡ | 86.6万円/㎡ |
| 北赤羽 | +18.9% | 76.9万円/㎡ | 91.4万円/㎡ |
| 浮間舟渡 | +15.6% | 68.4万円/㎡ | 79.1万円/㎡ |
| 北戸田 | +12.0% | 51.5万円/㎡ | 57.7万円/㎡ |
上の4駅はいずれも「上昇率が高い駅」です。しかし、これらの多くは元の単価が安かったため、パーセンテージが大きく見える計算上の現象であることをご理解ください。
たとえば北与野(+24.8%)は、一見するとすさまじい値上がりに見えます。ただし、2022年時点の単価は69.4万円/㎡と低水準でした。2025年現在の86.6万円/㎡(70㎡換算:約6,062万円)は、依然として路線内では割安な水準です。絶対値で見れば、池袋(113.4万円/㎡)とはまだ27万円/㎡(70㎡換算で約1,900万円)もの差があります。
同様に北赤羽(+18.9%)も、76.9万円/㎡→91.4万円/㎡(70㎡換算:約6,398万円)という変化です。2022年の安い水準から上昇したため数字が大きく見えていますが、絶対額はまだ割安圏に位置しています。
北戸田(+12.0%)に至っては、57.7万円/㎡という路線最安値を維持しています。上昇率が高いのは「安い基準値から算出されるため」であり、依然として実需ファミリーには最もコスパの高い選択肢といえます。
要するに、「上昇率の高さ」だけで飛び乗ることは危険ですが、「割安エリアが着実に評価されてきた」という事実は、長期保有目的の実需購入者にとってはポジティブなシグナルでもあります。
【金利の差が生む1,370万円のコスト】
どれだけ良い駅を選んでも、住宅ローンの金利設定を誤ると損失は避けられません。以下の表をご覧ください。

借入7,000万円・35年返済の場合
金利 月々の返済額 35年間の総返済額 0.5%との差額 0.5% 181,710円 7,632万円 基準(0円) 1.0% 197,600円 8,299万円 +667万円 1.5% 214,329円 9,002万円 +1,370万円
金利がわずか1.0%違うだけで、35年間の総返済額は1,370万円も変わります。これは埼京線の駅を1駅分「アップグレード」できるほどの金額差です。
初期費用(諸経費)の現実|「頭金だけ用意すれば良い」は大きな誤解です
多くの購入者が見落とすのが、物件価格とは別に発生する「諸経費」です。
一般的な目安:物件価格の約7〜10%が現金として消えます
費目 目安 仲介手数料 物件価格の3% + 6万円 + 消費税 登記費用(登録免許税+司法書士) 30〜80万円程度 火災保険・地震保険(長期一括) 10〜30万円程度 住宅ローン保証料・事務手数料 0〜70万円程度 固定資産税等精算金 数万〜十数万円 引越し費用・リフォーム代 物件状況により変動
具体例:7,000万円の物件を購入する場合
諸経費の目安は490〜700万円程度。これは現金で用意することが原則です。ローンには組み込めないケースが多く、「頭金ゼロでいける」と思っていた方も、実際には相当額の手元資金が必要になります。
諸経費分を含めた資金計画を立てたうえで、借入可能額を試算することをお勧めします。
【賃貸 vs 購入 35年間トータルコスト比較】

35年間の総コストを比較すると、以下のとおりです。
選択肢 月々の目安 35年間の総支払 35年後の資産 賃貸(月22万円) 22.0万円 9,240万円 なし(資産形成ゼロ) 購入・金利0.5% ローン18.2万 + 管理費等4.5万 9,522万円 不動産資産が残る 購入・金利1.5% ローン21.4万 + 管理費等4.5万 10,892万円 不動産資産が残る
※ 購入の総支払 = ローン総返済額(金利0.5%:7,632万 / 金利1.5%:9,002万)+ 管理費・修繕積立金等(月4.5万 × 420か月 = 1,890万)の合計。諸経費・リフォーム代は含まない。
表を見ると「購入のほうが総支払額が多い」と感じるかもしれません。しかし、大きな違いが1点あります。
購入の場合、35年後には不動産資産が手元に残ります。賃貸の9,240万円は文字どおり「消えるお金」ですが、購入の場合は売却すれば資産を回収できます。
もちろん35年後の市場価値は未知数ですが、割安安定圏(北戸田・戸田公園・武蔵浦和)で購入した場合、現在のペースで価値が維持されれば、購入のほうが実質コストは低くなる可能性が高いといえます。
金利0.5%を実現するには、変動金利型の住宅ローンを積極的に比較検討することが重要です。現在の市場環境では、ネット銀行や信用金庫がこの水準の金利を提供しているケースもあります。複数の金融機関への申し込みは一括比較サイトを利用すると便利です。

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